2012年12月号「かかりつけ医」

2012年12月24日

質問;高血圧は循環器科、慢性胃炎で消化器科と月にいくつかの専門医に通院しています

答え;ある病気の事に関して最良、最高の医療を提供してもらえる良いところがあります。しかし安定した後は定期的に診てもらう必要性は減ります。専門的な判断が必要な時に診てもらう事をお勧めします。

 

質問;最近、○○の症状がありますが、どこの科の先生に相談しても専門外だと言われてしまいました。

答え;自分の身体全体を把握して診てくれる、かかりつけ医にまず相談してください。薬の量、日常の体調、など総合的な判断より、必要に応じて最適な専門医を紹介いたします。

質問;かかりつけ医は、専門医でないので専門的なことがわからないかと不安です。

答え;しかし、いくつもの科から重複して薬が出ていることもよくあることです。やはり体の全てを把握している、かかりつけ医が必要でかかりつけ医がわかる範囲のことは、かかりつけ医で対処してもらいましょう。専門医への受診はかかりつけ医が判断するのが理想です。

質問;将来、通院出来なくなる時が来たらと心配です。

答え;元気なころから自分の身体をよく知っている、かかりつけ医に往診してもらうことが理想です。当院では、訪問診療、訪問看護が出来るので安心してください。長く最後までつきあえる、かかりつけ医がいると安心ですね。

当院では皆様のかかりつけ医、総合医をめざしております

 

院長のひとり言

元気なうちは皆さん自分の事は自分で決めていいのです。好きな専門病院を何個も掛け持ちしていいのです。しかし年齢とともに思考力、体力がなくなってきます。最後まで自分で決められる方は極めて少ないです。その時他人(体の事はかかりつけ医に任せる等)に任せられるか、これが重要です。自分で全部決めるということはかなりの覚悟がいります。

 

2012年11月号「血圧と自覚症状」

2012年11月24日

質問;血圧が上がると、なにか自覚症状がでますか?例えば「頭痛」「めまい」「肩こり」とか。

答え;基本的にはでません

 

質問;しかし「頭痛」「めまい」「肩こり」がひどいとき、血圧を測ると血圧がものすごく高くなっていて心配です。

答え;それは原因と結果が逆です。血圧が上がったから症状がでたのではなく、症状が出たため心配になりその結果血圧が上がるのです。

 

質問;自律神経ということですか?

答え;そうです。人は心配や不安になったり、喧嘩したり、怒ったり、これから土俵に上がるとき、ハンマ―を思い切り投げようとするとき自律神経を興奮させ(交感神経を興奮させ)その結果として血圧はあがります。血圧が上がるために怒ったり、不安になったりすることはないですよね。

 

質問;そういうときは血圧を下げる薬を使いますか?

答え;血圧のくすりよりも、まずは自分の気持ちの調節です。落ち着けば下がりますからご安心ください。

 

稀に血圧の上昇が脳の浮腫を引き起こし重度の頭痛を引き起こす高血圧緊急症という病態があります。めったにありません。

院長のひとり言

血圧手帳のグラフには血圧の正常値130/85?のところに太い線が引いてあります。患者さんの中には、この線をはみ出すことを異常に気にされる方がおります。この線をはみ出すと危ない、脳卒中になると。日頃活動的な方、心配性の方は上がりやすい傾向にあります。しかしお風呂に入ってゆったりした気持ちになったとき血圧が下がっていればまず安心です。そうそう脳卒中にはなりません。

 

2012年10月号「在宅医療」

2012年10月24日

質問;通院が大変になってきました。いろんな専門科にかかっていますが主治医がわかりません。

答え;いろんな科に通院している場合は主治医が誰だかわからないということがよく見られます。患者さん自身が主治医?のように振る舞う方もいますね。

 

質問;在宅医療をお願いするときには他院への通院は辞めないとだめですか?

答え;その必要はありません。在宅医療と通院を併用して結構です。その場合「主治医」は在宅医に任せた方がよいです。在宅医は患者さんの身体全部を診ます。また家庭環境、社会環境含めて診ていきます。そして将来どの科の通院が必要か、不必要かの判断をさせていただきます。

 

質問;いよいよ通院ができなりました。

答え;すべて在宅医療で診させていただきます。いろんな科から薬がでていると思いますが重複していたり、多すぎると思われる薬がでてきます。それは整理させていただきます。

 

質問;自宅で最期は迎えられますか

答え;自宅にいたいという気持ちがあればどなたでも迎える事が出来ます。当院が全力でお手伝いします。

院長のひとり言

いろんな専門家にかかっている方が通院困難となり在宅医療(訪問診療)を併用することになると、最初の仕事は内服薬の整理と通院科目の整理です。胃薬が何種類もでていたり、血圧の薬も何種類もでていたりするのです。静かな生活になると血圧は低くなり血圧薬はまず減量できます。通院先も一番重要なものだけにして他は当方で診て行きます。過度な薬や通院を減らすことによって体や精神的負担も減るようです。そしてよりよい自宅療養へと結びつけば幸いです。

 

2012年9月号「癌について」

2012年09月24日

質問;癌で亡くなる場合と老衰で亡くなる場合の違いはなんですか?

答え;・・・・明確な区別は難しいです。まず自然死にあたる老衰死について知るべきです。老衰の兆候は、元気がなくなります。食事量がだんだん減ってきます。最後は水を少々のみの日が続きます。周囲に無関心になります。寝る時間が増えてきます。「眠るよう」と形容されることが多いです。しかし最後の最期は呼吸が早くなり、荒くなります。これは苦しんでいるわけではありません。癌で亡くなる場合は、いかに上記の状況とかけ離れているかだと思います。

 

質問;うわごとを言ったり、わけのわからないことを叫んだりしています。

答え;冷静に自己分析できるか方に聞くと、最期になると、昔の事や思い出が走馬灯のように目の前にでてくるそうです。寝言に近いと思って見守ってください。

 

質問;癌の最期は苦しみますか?

答え;テレビの見すぎです。特殊な場合を省き、だいたいの方は苦しみません。痛みが出ている場合はモルヒネの鎮痛剤でほぼ調節できます。また極度の不安感など精神的なものから痛みが出ます。病気と闘うことも大事ですが、受け入れることも時には大切です。

 

質問;自宅で最期は迎えられますか

答え;自宅にいたいという気持ちがあればどなたでも迎える事が出来ます。当院が全力でお手伝いします。

 

院長のひとり言

だれでも病気になったら治りたいと思うのは当然の考えです。治ることに全力をかけてください。しかしある年齢に達した場合、病気があまりにも重い場合、治りたい気持ちだけで過ごすことがいい事なのか疑問に思うことがあります。人生劇場のエピローグ(終結部)を作れるのは本人のみです。ここが抜ける物語は寂しい。なんとか少しでも人生劇場の途中で、最期の物語を考える余裕、覚悟、があればいいな、といつも思っています。

 

2012年7月号「認知症」

2012年07月24日

その1;こだわりが消える

その心は; 私は絶対に呆けたくない、寝たきりになりたくない、などのこだわりから解放され、「老い」を心配しなくなります。

 

その2一人でいても飽きない

その心は; 周囲に無関心になるので、自分の世界に入っていることが多くなります。一人で1日中忙しく誰かと会話したり、仕事したり、しかし逆に関心を引きたくていろんなことをしでかすことはあります。

その3苦痛が軽減される

その心は;認知症になると、体に対しての関心も薄くなり、痛み、不安などが軽減される傾向があります。そのことから通院しなくなり、薬も減るようになります。

 

その4笑顔が素敵になる

その心は;一昔前は「恍惚の人」などと言われたように、なにか憑き物が晴れたような、わだかまりが消えたような、現世の苦しみから解き放たれたような、そんな感じを受けたものです。たまにのぞかせる満点の笑顔に遭遇することでしょう。

 

認知症になると、なにもかもおしましだという風潮がありますが、見方をかえれば、老いの一部として受け入れ、上手に付き合っていけると思います。

 

院長のひとり言

自分の親、じいちゃん、ばあちゃんが辻褄の合わないことを言い出したら、誰もいないのにぶつぶつ言い出したら、「違うでしょ、こうでしょ」とか「誰もいないじゃないか」とかついつい説教しがちです。しかしその説教はむなしいかな、彼らには届きません。逆に叱られたという負の感情のみが残ります。「うん、そうだね」と静かに寄り添って、その場がなごむ雰囲気を作りたいものです。

 

2012年6月号「血圧」

2012年06月24日

質問;普段はそんなに高くないのにデイサービス等で入浴前に血圧を測ったら高いので入れられませんと言われました。

答え;入浴すれば体が落ち着いて気分がよくなり血圧は下がりますから安心して入って下さい。脱衣所が寒かったり、お湯が高かったりすれば急激な血圧上昇をきたすことはありますが…。

 

質問;いらいらしたり、緊張したり、不安な時、血圧を測ると高く出て心配です。

答え;血圧が高い事を心配する前に、いらいら、緊張、不安 等の精神状態を落ち着かせましょう。そうすれば自然と血圧は下がります。無理に薬等で下げる必要はありません。

 

質問;脳卒中が心配です。

答え;医学的に証明されている事は、「高血圧の状態が何年も続いている場合にある確率をもって脳卒中が発症する」ということです。例えば平均血圧が180以上で1年間に2.5人/100人中程度です。(久山町研究から) 一時的に高くなったからといってすぐに脳卒中になりそうで危ないというわけではありません。

 

質問;寝たきりになるのがいやです。

答え;驚くべき事に血圧の薬を飲んでも寝たきりを予防できないというデータがあります。(NIPPON 研究から)

 

院長のひとり言

血圧は老若問はず「135/85以下」にと教わりましたが、これが拡大解釈?され、この血圧を超えてはいけない一線、超えたらあかんぞ、と皆は思うようになりました。少しでも超えると脳卒中になるかも、と恐れるようになりました。実際は「高い血圧の状態のままで何年も過ごすと脳卒中になる確率が少し増えますよ」ということなのです。もう少しゆったり構える事が肝要かと思いますがいかが。

 

2012年5月号「コレステロール」

2012年05月24日

質問;テレビでは「コレステロールは下げないと危険だ」と宣伝されていますが本当ですか?

答え;本当ではありません。コレステロールは脂質の一種で以下に示す例のように体にとって大切なものです。

1;皮膚などの元になっている細胞膜の原料

2;外敵から身を守るホルモンの原料

3;骨を作るビタミンDの原料

 

質問;体のコレステロールが少なくなるとどうなりますか?

答え;細胞膜が弱くなるので癌になりやすくなります。また体の抵抗力なくなるので風邪などにかかりやすくなります。

 

質問;多いとどうなりますか?

答え;コレステロール値が高いうえに、血圧が高い糖尿病がある、喫煙をする、身内に心臓病の人がいる、などの要素が加わると動脈硬化がすすみ易くなり、狭心症、心筋梗塞、場合によっては脳梗塞などになる可能性が少し高まります。コレステロール値だけが高い人はあまり心配しなくてもよさそうです。少し高いコレステロール値の人の方が長生きするというデータもあります。

 

質問; 総コレステロールが240以上での心筋梗塞の発症率は?

答え;男性で1.98~2.80人/1000人/年(発症率0.198%)

女性で0.34~0.45人/1000人/年(発症率0.034%)

(TIP1999vol14 No6より)

 

院長のひとり言

コレステロールが高くて薬を飲んでいる患者さんに心筋梗塞の死亡率はどのくらいと思うかと聞くことがあります。だいたい実際の値の100倍以上大きい答えが返ってきます。心筋梗塞の死亡率は交通事故の死亡率よりも低いのです。薬を飲むより道を歩かない方がいいかもしれません(笑)。われわれは病気になる心配をしすぎているのではないですか?もっと自分の体に自信を取り戻したいな、マスコミの宣伝に負けずに。

 

2012年4月号「アレルギー性鼻炎」

2012年04月24日

質問; アレルギーについて簡単に教えてください。

答え;ある物に対する過剰な体の反応のことを言います。鼻で過剰に反応すれば鼻水、皮膚で過剰に出れば蕁麻疹やかゆみ、目で過剰に反応すれば目の充血、かゆみ、涙、気管支に出れば喘息などになります。

原因の物質がいろいろあります。 その一つが花粉です。

 

質問 ;花粉症について教えてください。

答え ;アレルギー性鼻炎の一つで花粉が原因で反復するくしゃみ、水性鼻漏(鼻水)、鼻閉(鼻づまり)などの症状が出ます。

 

質問 ;花粉症の治療について教えてください。

答え ;まず基本は、症状がつらいとき鼻炎薬を飲む。次に、症状を出さないために症状が出ないうちから鼻炎薬をあらかじめ飲むという方法があります。西洋薬はおおむね花粉との反応を鈍らせる薬ですが、漢方は自分の体の弱い部分を補う薬です。

 

質問 ;薬で治りますか?

答え ;残念ながら薬は症状を止めるだけの効果しかありません。治したいとの希望であれば、脱感作療法が有名です。少しずつ花粉に触れ、体の反応が慣れてくるのを待つという方法です。

 

院長のひとり言

花粉症歴が約10年になります。人には「気合で治す」と放言したり、「免疫力を高めて治す」と言ったりしながら毎年苦労しています。花粉症の原因は花粉だけが悪いのではなく、人間の体が大きな意味で弱っているのではないかと考えているので、自分の体で実験しております。成果はいまだ現れず。です。

 

2012年3月号「アンチエイジング」

2012年03月24日

質問;アンチエイジング(抗加齢医学、老化予防)とは何ですか?

答え;「老化を予防し健康で長生きする」ことを目的とする医学です。加齢にともなう動脈硬化や、癌などの加齢関連疾患の発症率を下げ健康寿命をのばすことが目的をしています。

 

質問;老化とは病気の一つですか?

答え;老化は病気(老化しないことも可能)だと以前は言っていましたが、最近は老化の結果病気になりやすくなる という考え方です。

質問;老化しないために具体的にはどんな事をするのですか?

答え;栄養療法、運動療法、精神療法などが主で、特殊なものとしてサプリメント療法、免疫療法、美容医学などがあります。

 

質問;老化は防げますか?

答え;防げないのでなるべく遅くするために努力すること、実践が大切だとのことです。ただ大切なのは元気で長寿を享受することだそうです。あまり神経質にならず、人生をいかに楽しむかを考える事、いきいきと生活をすることがとても重要ということですか。(抗加齢医学会より)

 

質問;先生の考えを聞かせてください。

答え;老化の予防も大切ですが、残念なことに必ず老化します。一番重要なのは、老化したときの心の在り方、だと思います。恐れずにありのままの自分を受け止める心が自分を救うようです。

 

院長のひとり言

老化と健康とはオセロの黒駒と白駒みたいなもので、生まれたてはボードいっぱい白駒で埋められている。加齢とともに黒駒に埋め返され、最期は真っ黒。アンチエイジングとはいかに長く黒駒にやられないように戦っていくかという考え方です。勝ち負けと考えると必ず負け試合です。勝ち負けという考えではなく、変わっていく自分を美味く味わってみたいものですね。

 

 

2012年2月号「風邪の熱」

2012年02月02日

質問;風邪をひくと熱がでるのはどうしてですか?

答え;風邪の原因であるウイルス(病原体)と体が戦うことによって起こります。

 

質問;戦うとはどういうことですか?

答え;ウイルスが体に入ってくると、血液の中の白血球がウイルスを

やっつけてくれます。その時出てくる物質で熱が上がりさらにウイルスを退治しやすくします。

 

質問;熱を下げたほうが良いですか?

答え;熱を下げるということは戦いを中断、もしくは戦いにくい状況を作ることです。だから戦いを早く終わらせるには熱は下げないほうが良いと思います。体はつらいとは思いますが。

 

質問;解熱剤を飲むと効いた感じがするのはどうしてですか?

答え;薬で熱を下げるので体は楽になります。戦いにくい状況でもたいていのウイルスはいずれ死滅します。しかしインフルエンザなど強力な敵の場合は解熱剤を使うと戦いは長引きます。

 

質問;先生のところで漢方薬の風邪薬(麻黄湯、葛根湯、桂枝湯 等) を出すのはどうしてですか?

答え;西洋薬の解熱剤を使うと戦いを中断させることになります。しかし、漢方薬の風邪薬は戦いを促して早く終わらせるようにする働きがあるからです。

院長のひとり言

毎年冬になると風邪(インフルエンザ、嘔吐下痢症、その他いっぱい)が流行ります。たとえ仮にインフルエンザだけ予防できたとしてもその他多数のウイルスに感染する危険があり、結果として風邪にかかる頻度は同じだと思います。インフルエンザの検査、治療薬(1日熱が早く引く)が出来たばっかりに大騒ぎしている気がします。